最近では、放課後学習支援「ゆめの木教室」に通う子どもの中に、発達の凸凹が見られるケースがあり、スタッフから「どう接するのが最善なのか」という問いが日々投げかけられていました。日常的にも、スタッフの間でそのような会話の内容が聞こえてきます。
そこで、子ども一人ひとりの困り感に寄り添う関わり方を学ぶため、スタッフ研修を開催いたしました。

研修の概要
- 日時:2026年8月31日(月)14:00〜15:00
- 場所:保見団地 UR141棟 第二集会所
- 講師:森井 えみ さん(幼児向け日本語教育事業責任者)
- 参加者:9名
- 内容:発達障害の基本理解と、ケース・事例を基にした質疑応答
講師の森井さん
今回講師としてお話しいただいた森井えみさんは、現在、当法人の幼児日本語教育事業責任者として活躍されており、これまでも発達障がいのある子どもたちの施設や児童養護施設、学生の指導など、幅広い年齢層と長年関わってこられました。
森井さんは冒頭でこうお話しされました。
「同じ『ADHD』という診断名がついていても、子ども一人ひとりの様子は全然違います。まずは、その子の『脳の凸凹』を知ることが大切です。」
発達障害とは「脳の凸凹」

森井さんから、発達障がいの最も大切な捉え方として「生まれつきの脳の凸凹、つまり得意・不得意の差が大きい状態」であることを学びました。これは病気でも、親のしつけの問題でもありません。努力すれば治る、というものでもなく、子ども自身も全力で頑張っているのに、脳の働きの違いからうまくいかないことがあるのです。
現在、全国の小学校1年生の中で約7万人、6.5%の子どもに発達障がいの診断が下っていると言われています。日本も真剣にこの分野に取り組み始め、幼い頃から気になる子を早期に支援に繋げる流れが広がっています。
3つの「困り感」のパターン
知的な遅れがないため、「できるんだからやりなさい」と言われがちなのが、発達障がいのある子どもたちの大きな苦しみです。森井さんからは、主に3つのパターンについてお話しいただきました。
ADHD(注意欠如・多動性・衝動性)
じっとしていられない、人の話を最後まで聞けない、忘れ物が多い、感情のコントロールが難しいなどの傾向があります。一見「やる気がない」「怠けている」と見えがちですが、本人はその場では覚えていても、すぐに忘れてしまうことがあるのだそうです。
ASD(自閉スペクトラム症)
こだわりが強く、変化が苦手な子が多く、3歳頃からその傾向が見られることがあります。「ちょっと」「ちゃんと」といった曖昧な言葉が通じにくく、相手の気持ちや場の空気を読むことも苦手です。しかし、興味のある分野では大人顔負けの知識を持っていたり、記憶力に優れていたりする子も少なくありません。
SLD(学習障がい)
会話や知能には全く問題がないのに、読む・書く・計算するなど、特定の学習だけが極端に苦手な状態です。ノートの文字が枠から大きくはみ出したり、飛ばし読みになったりすることがあります。これも「やる気がないだけ」と誤解されやすい傾向にあります。
今日から実践できる3つの声かけ

森井さんからは、現場ですぐに活かせる関わり方のポイントを3つ教えていただきました。
① 短く、具体的に伝える
「静かにしなさい」「ちゃんとしなさい」ではなく、「口を閉じて、一緒に座ろうね」「あと3分でおしまいだよ」と、具体的で短い言葉を使います。時間を設定することで、子どもは「いつ終わるか」を見通せるようになり、安心して取り組めます。
② 視覚的に伝える
言葉だけではイメージが湧きにくい子には、お手本を見せたり、イラストや文字で書いて伝えたり、スケジュールをホワイトボードに貼って「今日はこれだけやること」と見通しを持たせることが効果的です。1つ終わるごとにチェックを入れ、終わりが見えるようにすることで、子どもの心に余裕が生まれます。
③ 「できた」を見逃さない
発達障がいのある子どもたちは、できないことばかり指摘されて育ってきたことが多く、自信を失いがちです。席に座れたこと、5分で宿題が終わったこと、鉛筆を持てたこと。どんな小さなことでも、「できたじゃん」と褒めて認めてあげることで、「ここは自分を受け入れてくれる場所なんだ」という信頼が生まれ、意欲につながります。
事例・質疑応答

後半は、参加者から日々の現場での疑問が投げかけられ、森井さんにアドバイスをいただきました。
Q. 算数が苦手で、間違いを指摘すると全く聞いてくれない子がいます
A. その教科が苦手で、指摘されること自体が嫌になっている可能性があります。最初から100%できるようにしようとすると負担になります。何がどこでつまずいているのかを見つけ、鉄棒の逆上がりができない子に筋力をつける練習から始めるように、スモールステップで成功体験を積み重ねることが大切です。
Q. 難しい問題になると手をつけず、急に泣き出したり怒ったりします
A. 発達障がいの子どもは気持ちの切り替えが苦手な子が多く、一度パニックになると自分で戻れないことがあります。無理に言葉をかけず、隣で静かに待つことも大切な関わり方です。「今日はやらなくてもいいよ」「帰ってもいいからね」と選択肢を示し、安心させてあげることで、自分の気持ちを切り替える力が育ちます。
Q. 自分の気持ちを言葉にしてくれない子がいます
A. 自分の感情がわからない、説明の仕方がわからない子もいます。「どっち?」「イエスかノーか」といった二択で聞いてあげたり、感情を表すカードを使って選んでもらったりすることで、少しずつ言葉にできるようサポートできます。
参加者の声

研修終了後、参加者の方々から感想をいただきました。
- 発達傾向の違いによる行動や状態の違いがよく分かった。
- はたから見ているとそんなに困っているように見えなくても、本人は困っていたり息苦しさを感じていることが印象に残った。
- スモールステップで少しずつ成功体験を積ませることが大切だということが学びになった。
- 心の余裕がやはり大切ですね。その上で、子どもの様子を見て、受け入れることから始めようと思います。
- 小さな『できた』を見逃さないように気を付けて、できたことを本人に気付かせたい。
- 具体的に選択肢を示してあげることを試してみたい。
- ちょっとでも褒めようと思いました。
また、「具体的な例を示しながら話していただいたので大変わかりやすかった」「例が具体的で、かつユーモアがありわかりやすかった」などの声を多数いただきました。
一方で、「発達障がいに関する学びを深めたい」といった、さらなる学びへの期待の声も寄せられました。
まとめと今後の展望
今回の研修を通じて、スタッフ一同、発達に凸凹がある子どもへの接し方を知識として学び、実際の現場でどう活かすかを共に考える貴重な時間を持つことができました。
「なんでできないの?」と問いかけるのではなく、「どうしたらできるか」を一緒に探し、「できた」を見つけて認め合う。そんな関わり方を一つずつ実践していくことで、子どもたちにとって「ここなら安心して学習に取り組める」「自分を理解してくれる居場所」であると実感してもらえる場を守っていきたいと考えています。
今後は、今回の研修を第一歩として、継続的な研修やケースを基にした質疑応答の場、個別の相談対応、保護者への情報提供などにも取り組んでまいります。
ご支援・ご協力いただいている皆様に、心より感謝申し上げます。